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・茂木健一郎氏基調講演&パネルディスカッション「自殺しない脳 自立したくなる脳」

2013.09.28

イベントチャリティカレッジ

■日時:2013年9月28日(土)14:00~16:40
■会場:東京ウィメンズプラザホール
■内容:
 1.基調講演「自殺しない脳 自立したくなる脳」茂木健一郎氏
 2.パネルディスカッション
    コーディネーター:江口歩氏
    パネリスト:茂木健一郎氏/月乃光司氏/渡邉幸義氏
 3.支援団体の紹介
 4.支援団体との情報交換会(自由参加)


9月28日東京ウィメンズプラザホールにて2013年度チャリティカレッジ『子どもたちの明るい未来のために「若者の自殺と自立を考える」第2回』を開催いたしました。
150名以上の方にお申込みをいただき、開催の主旨に賛同いただいた8団体が参加され、コーディネーターの江口歩氏と代表の朝山代表の漫才のような掛け合いの中、明るく楽しい雰囲気でスタートしました。

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  1. 基調講演「自殺しない脳、自立したくなる脳」茂木健一郎氏

IMG_1914.JPG脳科学者の茂木健一郎氏によると、「自殺したい」という願望は自然とわき上がってくるもので、この無意識な衝動は抑えようがなく、抑圧しようとすればするほど大きくなるため、解消するには「自殺したい」という衝動に向き合うしかないとのこと。
なぜ自殺したくなるのか自分自身に問い直し、自分を客観視し、自分と対話が出来るか、なぜこう感じているのだろうと考えることが解決につながる。
それが出来る人は自殺のリスクは比較的小さい、と話されました。
人のために何かをしたい、人に何かしてもらうと嬉しい、と感じる時に人の脳はドーパミンを作り出しているそうです。
人を必要とし必要とされる関係性が人の喜びに結びつき、生きる力なのだとおっしゃいました。
また、人はお金(経済的理由)の問題で自殺するのではない、人が自殺する理由は人間関係の希薄さであると話されました。
猿の研究では脳の大きい種の猿ほど「毛繕い」をし合う仲間の数が多いことが分かっています。
「毛繕い」をすると免疫機能を向上させるβエンドルフィンが作り出されるそうです。
人間で言えば、「毛繕い」は「会話」です。自殺しない社会とは、「毛繕い」=「会話」をする仲間を増やせるような社会であると話されました。
他にも、アメリカでは死刑囚が死刑執行前日の夕食を一生懸命に選ぶ事例を挙げ、死を目前にしていても人間は「感覚の喜び」~(この場合)「美味しいモノを食べる」~に固執するものであり、感覚の喜びが人間を生かす原動力であると話されました。
人間が持つ恐怖や不安を克服するために脳が進化させてきたものが「笑い」で、恐怖や不安といったマイナスのエネルギーは「笑い」でプラスのエネルギーに変えられる。
辛いことや苦しいことを「笑い」に変えられれば、生きるためのエネルギーに変えられるんだと説明されました。
負の経験をたくさんした人ほど将来へ生きるエネルギーの貯金をしていると考えられるとのことでした。
最後に、日本は「自立」や「自己責任」のもとに、全部自分一人で完結することを讃える風潮があるがそうではない。人と人がつながるべき、自分ですべてやるのではなくお互いの個性を認めて結びつくべきであると訴えて基調講演は終わりました。
参加された方からは、

「自立しなくていい、チームワーク、コミュニケーションが大切だという話が心に響いた。」
「人間の脳は関係性の中で存在するという言葉が新しい発見でした。自立することと笑いの相関はあると思いました。」
「ユーモアあふれるお話の中に大切なキーワードがたくさんありました。猿の毛繕いが人間にとって会話というのは目からうろこです。」

といった声をいただきました。

  1. パネルディスカッション質疑応答

初対面の方もいらっしゃいましたが、登壇者それぞれがすでに旧知ということで、江口氏のコーディネーションのもとフランクな雰囲気で進行しました。
月乃光司氏は、自身の引きこもりや自殺未遂の経験を振り返り、まさに「孤立」がその原因であり、生き辛さを抱える人同士で傷をなめ合うことが「毛繕い」なのだと、「目から鱗」だったそうです。
さらに茂木氏は、人が生き辛さを感じるようになる環境要因の一つとして親(特に母親)との関係が大きな影響を与えることを指摘しました。
すると月乃氏は自分と親との関係を、渡邉氏は雇用支援している引きこもりの方とその親の関係についてそれを裏付ける体験を紹介しました。
茂木氏によれば、自分と親の関係を客観的に把握(メタ認知)できることが大事とのことでした。
大学生の自殺についても、「こうじゃなくてはいけない」ということと自分が違っていると苦しくなってしまう日本社会の現状があり、社会がなかなか変わらないなら個人個人が変わるしかないとの意見で一致。
話題は高齢者にも広がり、江口氏がプロデュースしている高齢者のお笑いグループ「笑年隊」の話しや、渡邉氏の軽度の要介護高齢者をターゲットにした新規事業の話しで、ギャンブルによってドーパミンが出て老化の進行が止まるのか?といった話しで盛り上がりました。
また、茂木氏からはアンチエイジング(抗老化)の観点から、「人に必要とされること・人を必要とすること」「喜び」「発見」「新しいことにチャレンジすること」が脳に刺激を与えてポジティブな影響を及ぼすと話されました。

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質疑応答コーナーでは、会場から自身の経験に基づいた質問やコメントが次々と挙がりました。
江口氏の軽妙な仕切りのもと、笑いが起こったり話に聞き入ったりと、内容の濃いセッションとなりました。
その後、月乃氏が詩「僕はサバイバー」を朗読し、来場者はその迫真のメッセージに引き込まれていました。
最後に茂木氏は、「自立」も「自殺防止」も重要なことだが、暗い穴に近づいて突き詰めるだけではなく、いろいろなものごとの「合わせ技」で取り組んでいくべきではないか、とコメント。
人が生きて行くには個性や多様性を認め合って結びついていくことが大切であるように、生き辛さともいろいろな向き合い方があって良いはずという茂木氏からの呼びかけで終了となりました。
参加された方からは、

「自立心が強すぎること、自立を強要されることが自殺や犯罪を引き起こすのでは、と思った。」
「多様なタイプのパネラー、構えたりカッコつけたりする人がいなくて本音で言うのが良かった。」
「実は、、という告白が多く感じ入りました。」
「詩の朗読に感動しました。心に響きました。」

といった声をいただきました。
その後、ロビーに設けられた情報交換会の場では支援団体と来場者が交流を深め、大盛況のうちに全プロブラムが終了しました。

(報告:正会員 太田 志津子)

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