静岡の新聞やテレビのニュースで、2023年6月1日に、第26代「高校生平和大使」長崎派遣代表に静岡県富士市の渡邊楓花さんが選ばれたと聞きました。
■静岡新聞記事
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1250977.html?fbclid=IwAR2evmGO6aDAAIerxp-dYNJ_ruMoYAJZ-udt9bgOR0kzsT2BdemGxCTabe8
その楓花さんは平和大使に応募する少し前に、静岡県長泉町において行われた私たちのキャリア教育ワーク「すきなものビンゴ&お仕事マップ」を体験しました。
そしてワークで発見した自分の「わくわくエンジン」が平和大使の選考で行われる面接やスピーチで活かされたと言います。
●わくわくエンジンを体験してみてどうだった?
●平和大使の応募にどう活かされたの?
●これからどうしたい?
わくわくエンジン発見のワークを体験した楓花さんが、どんなことを感じて行動や選択にどのような影響があったのかを、チームしずおかリーダーけんけんがお聞きしました。
聞き手:
けんけん(チームしずおかリーダー)
てらっち(広報)
語り手:
渡邊楓花さん
お母さんの直美さん(キーパーソン21のメンバー)
平和大使の選出
けんけん(以下、け):よろしくお願いします。楓花さん、NHKのニュースを見ましたよ。
お母さんの直美さんから、楓花さんがわくわくエンジンを発動して、『高校生平和大使』長崎派遣の県代表になったと聞きました。
楓花さん(以下、楓):はい。これから9月におこなわれるピースフォーラムに合わせて長崎市を訪問したり、式典にも参加させていただきます。
け:キーパーソン21は、学校や地域の施設に行ってプログラム実施をするんだけれども、ほとんどの場合、プログラムを受けた子が、その後自分のわくわくエンジンがどう行動に結びついたのか、どういうふうにその子の気持ちや行動が変化していったのかをなかなか追いかけて聞く機会がなかったんです。
なので今回はわくわくエンジン発見後の行動や心の変化について、楓花さんにぜひインタビューさせていただきたいとお願いした次第です。
楓:よろしくお願いいたします。
プログラムを受けるきっかけ
け:まず、今年の3月に(静岡県東部の)長泉町まで来てもらって、プログラムを受けてもらったのだけど、なぜ受けようと思ったのか教えてください。
楓:はい、簡単な理由の一つとしては母が誘ったからなんです。これまでも何度か母からキーパーソンさんのお話を伺ってワークが面白いっていうのは聞いてましたから。(お母さんの直美さんはキーパーソン21のメンバーです)
それからもう一つの理由が進路です。
進路とか将来のことはそれがあまりにも漠然としていて、うまく言語化できない、論理的に説明できないところが、私の中であったんです。
それはもちろん今でもうまく説明できない時もあるんですけど、この活動に参加して、具体的にどういうふうに自分が思っているのか自己理解をもっと進めたいなと思っていました。
今の大学の一般入試は私には向いていないと思っていたので、そうなると面接や小論文が必要になります。そこで求められるのが、やっぱり「なぜ自分がこう思ったのか」「何をしたいのか」。高一から高二のはざまの大事な時期に自分のことを考えられるのはいいなって思って参加しました。
「すきなものビンゴ&お仕事マップ」を受けて
け:なるほど。では、実際にあのプログラムを受けてみてどうでしたか?
楓:そうですね。こういう段階を踏んで、こう行けばわくわくエンジンに辿り着くのか、すごい!っていうのが一番の感想でしたね。
このわくわくエンジンが、自分の将来像に近い、というか、自己理解でもありながら、将来の自分のやりたいことに持っていけるものだと思いました。
「すきなものビンゴ」のように、まず自分の好きなものから始まって、その後、過去現在未来の話で、現状理解だったり昔がどうだったかっていう、いろんな観点から見た上で、(後半の)「お仕事マップ」で自分の興味と社会を繋げるっていう、結局「自分はどう?」っていう根っこのところから、最後にわくわくエンジンにつながる、この段階の踏み方がすごいなって思いましたね。
け:なんか聞いてて鳥肌立つんだけど(笑)。
確かにね、よくある自己理解とかっていうと、例えば心理検査や適性検査みたいなね、ちょっと固めのものだったり、あんまり楽しくないようなものだったりして。でもわくわくエンジンは、楽しみながらちゃんと自分に向き合えるっていうのが、特徴かなと思います。
楓花さんのわくわくエンジン
では、プログラムを通して出てきた楓花さんのわくわくエンジンは何でしたか?
楓:私のわくわくエンジンは、『未知の出来事を世界に発信すること』です。
け:ほほう、なるほど。これは言語化した時にすごく腑に落ちましたか?
楓:そうですね。そうだと思いました。
け:そうなんだね。私は最初はあまり腑に落ちなかったのでね(笑)私が腑に落ちるわくわくエンジンを発見するまでにいろいろ変わって3年ぐらいかかったかな。
楓花さんは一発でというのはすごいな!それで、それはすんなりと出てきましたか?
楓:すんなりとは行きませんでしたけど。この「未知」「世界」「発信」というキーワードが軸だと思っていて、その点と点をつなげてくださったのは、やっぱりキーパーソンの大人の方(わくわくナビゲーター)でした。
け:子どもたちのテーブルにつく大人のわくわくナビゲーターが、コミュニケーションを取りながら、より自己理解を深められるようサポートしているんだけど、今の楓花さんの言葉で私たちのワークにますます自信が持てました。
わくわくエンジンが見つかった後の変化
では、わくわくエンジンのゲームをする前と、言語化した後で、楓花さんの気持ちとか行動面で何か変化が起きましたか?
楓:このわくわくエンジンはどういう風に私の仕事や将来につなげられるのかな、と考えました。あとは今からこれをどう実践に移せるのかなと。
それが平和大使の方に繋がるのか、また私は別でラジオ(富士市の中高生発信のラジオ番組。後述)もやってるんですけれど、そのラジオの中でこのわくわくエンジンをちゃんと活用できるのかというのも考えました。
け:なるほど。わくわくエンジンを活用した結果、一つはその平和大使への応募に繋がったんだね。
それで平和大使への応募は『やってみよう』ってすんなり行動に移せた?
楓:平和大使に応募したいって思うには時間がかかったんですけど、応募を決めた後の志望理由を考えたときに、自分の原点や内面を辿っていって、やっぱりそこにわくわくエンジンと平和大使はつながるんじゃないかって思って。
応募したあと、面接やスピーチは、わくわくエンジンが軸になってくれたので、キーパーソンさんの活動をやらなかった場合はこんなにすんなり行かなかったんじゃないかと思います。
わくわくエンジンと平和大使
け:なるほど。『未知の出来事を世界に発信すること』っていうわくわくエンジンと平和大使の活動がどういうふうに繋がっているのか、もう少し詳しく話してもらってもいいですか?
楓:はい。私の高校生平和大使としての活動の指針は三つあって、
1つ目が「過去を学ぶこと」
2つ目が「今起きてることを解決するためには何が必要か考えること」
3つ目が「実際に行動を起こすこと」
私はこの三つが平和の礎となるもので、これをちゃんと伝えたい。これをみんなができる場所を作りたいというのが平和大使としての指針なんですよね。
これがまさしくわくわくエンジンに関係するんじゃないかなって思って。
「過去を知る」っていう面は、未知の出来事を知ることがそれで、「何が必要か考える」も世界に考えてもらいたいことを発信することで繋がりますし、「実際に行動していく」っていうのも、その未知の出来事をもっといろんな人に知ってもらうために発信して、さらに私じゃない誰かにどんどん派生していろんな人に伝わっていくことが、それに当たるのじゃないかなと思いました。
け:なるほど。過去の出来事は、楓花さん自身にとって未知の出来事で、それを伝えることでわくわくエンジンの『未知の出来事を発信』になるってことだね。
わくわくエンジンと進路や方向性の明確化
じゃあ、わくわくエンジンに出会ってから、高校を卒業した後の進路や、進む方向性が明確になりましたか。
楓:そうですね。自分がまずどこを向いてるのかっていうのは、固められたと思います。
そもそも人を相手にするのか物を相手にするのかから始まりました。私の性格的にはやっぱり対人向きの性格だと思っています。かつ、日本のものや日本文学が好きで、そっちも研究したいとも思ったんですけど、同時に目は世界の方も向いていて、具体的に言うと、哲学だったり、心理学だったり歴史だったりっていうのが興味のある部分ですが、それのどこの部分を見てくのかってなると外国になるんですよね。
なので、勉強したい学問は外国の文化。文化の中の歴史や心理学や哲学などを勉強できる学部に行きたいと思っています。
もっと進んだ先のことを言うと、そういうのを勉強した上で、それは日本に取り入れられるのかを勉強したいなと思いました。
プログラム受講前と受講後の変化
け:では、ちょっと直美さん(お母さん)に聞くけれども、3月のプログラム受講前と受講後の様子を見ていて、何か変化や気がついたことがあったらお願いします。
母の直美さん(以下、直):そうですね。本人も言ってましたけど、何となくやりたいことっていうのはわかってたんですね。だけど、それを言語化できたことによって、将来のことがきっとスムーズに決められるようになったのかなって思っています。例えば学校でキャリアパスポートってのがありますよね。多分今年何の迷いもなく書けたと思うんですよね。
去年なんかもう、私も手伝ったりしたよね?
楓:去年はお金持ちになりたいって書いた笑
直:そこを深掘りしていって、なかなかそれはそれで面白かったんですけど(笑)、今年はそんなことをすることもなく、キャリアパスポートもするっと書けたし、平和大使をやりたいって言ったときにも、わくわくエンジンをそのまま使えばいいじゃないと伝えて、そこから本人が深掘りしていって、小論文もスピーチも、たいして困ることがありませんでしたね。
け:なるほど軸が定まることによって、ちゃんと自分で考えて、なおかつそれを言語化したり行動に移せるようになったっていうことか。
直:そうですね。これは私がキャリコンをやっていても思うんですけど、自己理解ができていると、何を聞かれても答えられますよね。だから本人も多分ここから先、わくわくエンジンはもちろん変わってくるんでしょうけど、今の段階で変わっていなければもう何聞かれても多分答えられるし、何でも書くこともできる。自分が定まってるってのはやっぱそういうことですよね。
キャリアコンサルティングとわくわくエンジン
け:一つ直美さんに聞きたいんだけど、キャリアコンサルティングで言うところの自己理解っていう概念と、キーパーソン21のプログラムの中でのわくわくエンジンという概念は、ほぼイコールですか。
直:イコールですね
け:それイコールなんだね。適性検査がどうとかそういうんじゃないだよね。自己理解っていうのは。
直:適性検査って最終的に落としどころとして職業名が出てくる。
でも職業って、今ある職業が永遠に続くわけでもなく、その職業の資格を取るためには勉強もしなきゃいけなかったりして。職業名が出てきたときに「えーっ」ってそこで首をかしげる子たちがたくさんいるんですよね。
急に現実に引き戻されるんですよね。職業名が出てくるとやっぱりね。わくわくエンジンのいいところはそこが職業名じゃないところですからね。
け:「〇〇すること」だもんね。
直:はい、「〇〇すること」なので、イコール仕事ではないですよね。
私達の考えるキャリアは、仕事だけじゃないんですよ。その人の生き方とか人生そのものをキャリアっていうので、家庭もキャリアだしあとボランティアもキャリアだし、町内の活動だったりとか、塾とか習い事とかそういうのも全部キャリアなんですよね。だからわくわくエンジンで出てきたことイコールが仕事ではない、それが私は好きですね。
け:そういうことがいいんだね。キャリアコンサルティングって職業紹介じゃないんだね。なるほど。
ラジオの活動
では楓花さん、ラジオの活動について教えてください。これはどういうことをやっているの?
楓:これは、月に1回、富士市と富士宮市の中学生と高校生が集まって、富士市の吉原商店街にあるラジオエフという放送局で、自分たちで企画し放送する番組です。
番組の一番要となる部分はやっぱり中高生が情報発信するところ。
中高生目線で、流行ってるものや、逆に大人はどういうことを考えて何が違うのかとか、
他にも市内のお店にインタビューに行き、工場見学をさせていただくこともあるんですよね。
中高生目線で、情報を発信をしていくっていうのが、番組の大切な部分だと思っています。
け:わくわくエンジンを見つけた後、楓花さんは、これからそのラジオで発信したいことがありますか?
楓:今一番やりたいと思っているのが、平和大使とリンクさせることです。
平和大使として、第5福竜丸の勉強や、東京に行ったり、長崎で原爆の勉強をしたりとか。自分が得た知識をラジオでも伝えたいですね。
一緒にラジオをやっている同じ世代の仲間にも知ってもらいたいという気持ちもあります。同じ世代だから意見を共有したいし、ラジオだと行動を共有するまでは行かないかもしれないけど、どうすればいい?と考えるところまではできると思っていて。私が少し持っている知識をみんなに知ってもらって、いろんなところをリンクさせられるんじゃないかなって思っています。
編集後記
今後は、8月に長崎での式典に派遣されたり、及び県内での核廃絶・平和活動、高校生一万人署名活動に一年間参加といった平和大使の仕事があるとのこと。さらに地元のラジオでも活躍が楽しみな楓花さん。
会話の中に、お母さんの直美さんが娘さんを一個人として認めて、距離感を持って見守っている関係も垣間見えました。
また折があれば、楓花さんのわくわくエンジンその後をインタビューさせてもらえたら、どのように変化して行ったのかがわかりますね。
今回は貴重なわくわくエンジン発見後のお話をお聞きしました。